その子らしい学び方を尊重するデンマークの教育~どこで学ぶ?どうやって学ぶ?~

 

デンマークの授業を観察して、驚いたことがあります。授業中、廊下や階段の至る所で、子どもたちが学習していることです。廊下にあるテーブル席やソファー席はもちろん、壁の高い位置に設置してある遊具のような学習スペースで学んだり、階段や踊り場の床に座って学んでいたり。何を学んでいるのかのぞいてみると、算数・数学の問題を解いていたり、生物の授業のグループワークをしていたりと様々。子どもたちが、自分が集中しやすい、又は学びやすい場所を自分で選んで学習するというスタイルなのだそうです。一人で解くか、友達と一緒に解くかも自分たちで決められます。おしゃべりももちろんあります。緊張感の少ない、すごくリラックスした雰囲気で学んでいるのがとても印象的でした。

 

例えば、私が見た数学の授業では、はじめの15分ほど、全体で解き方を確認したら、自分のPCをもち、それぞれ好きな場所で練習問題に取り組みます。教室に残って教師と一緒に解く子ももちろんいます。人数も少ないことで、先生と距離が近く、質問もしやすく、とてもリラックスして学んでいました。たとえ先生の前でも、まるで友達同士で談話を楽しんでいるように足を投げ出してすわっている子もいました。そして、多くの子は教室をさっと出ると、自分の好きな場所に座り、問題を解き始めていました。教師は、教室にいる子を支援した後、廊下に出て、様子を見守ります。子どもたちは必要に応じて、教師を呼び、アドバイスをもらっていました。

時間が来ると、一斉に終わります。もちろん、子どもによって、解けた問題数は様々。教師はそれらをどのように把握をするのかを尋ねると、パソコンに記録が残っているからチェックできるとのこと。日本だと、「空いている時間に、最低ここまではやりなさい」「先生と一緒にもうちょっとがんばろう!」「やれていないところは宿題に」・・・なんてこともありますが、デンマークでは、全員がここまで進んでいなければいけないということはなさそうです。おまけに、宿題もほとんどありません。どこまで進むのか、何問解くのかについても、個に任されている様子でした。

 

 そうなると、いろんな面で、個々の差は当然ついていきます。でも、「人はちがって当たり前。得意苦手があって当たり前。できないことは、互いに助け合えばよい。できることを活かして社会に役立つ大人になろう。」そんな考え方があるデンマークでは、特に問題にはならないようです。そして、社会で自分の力を活かすために、子どもたちが自分の好きなことや得意なことを見つけることを支えるシステムや高校に入るときに学力が足りない場合に1年間学び直しができる学校(10年生)もあります。

「自分で学び方を選ぶ」「自分の責任で学ぶ」というのは、リラックスして学ぶことができる一方で、より自分で自分の学びに責任をもち、主体的に学ぶことが求められる、そんな気がしました。その姿勢は、低学年から、日々の授業の中で積み上げられてきているようです。

 

私が見た2年生の「デンマーク語」の授業では、ある物語の主人公や場面設定について学んでいました。「主人公の見た目は?」「主人公の家族は誰?」「主人公はどんな場所に住んでいる?」などの質問が7つ与えられ、各々でノートに考えを書き込んでいました。

興味深かったのは、答える方法として、3種類提示してあったことです。

A  10のキーワード(単語のみ)で答える

B   5文で答える        

C  一貫性のある(つながりのある)文章で答える

子どもたちは、この3種類の中から、自分に合った方法を選んで、取り組むのだそうです。何だかやる気がわきませんか?担任の先生によると、子どもたちは自分のことをよく分かっていて、ほとんどの子が適切に選べるとのことでした。おそらくこれまでの支援あってのことだと想像できます。子どもたちは小さな選択を何度も積み重ねてきているということでしょう。さすがに2年生では、「廊下に出て好きな場所で学ぶ」ということはありませんでしたが、教室の中で、教師とペタゴー(子どもの活動を支援する専門職)が、子どもたちの質問に答えたり、出来映えをフィードバックしたりして、個の学びを支えていました。

 

信頼と自己責任の中での主体的な学び。その子らしい学び方を尊重してくれる。そして、たとえ勉強が苦手でも、他の道があるという意識を学校ももっていてくれている。勉強が絶対!!という雰囲気が強くない学校は、子どもにとって、とても呼吸しやすい場所であると感じました。

 

ではまたね~ Hej hej